マリン・クロノメーターとは船舶用時計です。かつては船舶が現在位置を正確に知るため必要不可欠な計器のひとつでした。現在、記念艦三笠にはユリス・ナルダン社製のマリン・クロノメーターが保管されています。ユリス・ナルダン社とは1846年に創業されたスイスの名門老舗時計メーカーです。40ヶ国以上の海軍に公式時計として採用されていました。
三笠が建造された明治の頃、天賞堂はスイスに駐在員を置き精力的にスイス製時計の輸入販売を行っていました。ユリス・ナルダン社製の腕時計も天賞堂の手によってはじめて日本に紹介され好評を博していました。
こういった背景から、三笠に搭載されているマリン・クロノメーターも天賞堂とのなんらかのつながりがあったと推測されます。調査したところ三笠に保管されているマリン・クロノメーターは1918 年にユリス・ナルダン社が製造した物であることが同社の台帳から判明しました。昨年、天賞堂は創業130年事業の一環として、ユリス・ナルダン社協力の下、このマリン・クロノメーターの修復を手掛けています。スイスに送られたものの修理は困難を極めました。退職したベテラン技師までもが加わっての作業となり約5ヶ月を要しました。しかしマリン・クロノメーターは元のように息を吹き返し、平成21年(2009年)5月、日本海海戦104周年記念式典で無事返還することができました。
三笠と天賞堂、100年の時を越えたつながりを形として遺していきたい…そんな想いがこの模型には込められています。