先ほどの後半部分にて、ご紹介させていただきましたが、1994年以降の分割民営化によって、このIC225列車もすべて一民間組織に継承されました。
現在、このIC225という列車を全面的に運行・管理しているのは、G・N・E・R(Great North Eastern Railways)社となっております。(写真4参照)
同社のMK3および4型客車の両サイドには、"ROUTE OF THE THE FLYING
SCOSMAN"と書かれた渋い紋章が必ず取り付けられており、21世紀の今日においても、頑なまでに伝統主義を守る国民性を感じられます。
(※この紋章は、同国でもっとも有名な列車のひとつであったThe Flying Scotsman(フライング・スコッツマン=空飛ぶスコッツトランド人)という名に由来します。
第二次世界大戦中でもあろうとなかろうと、午前10時の定時発車を頑なに守った誇り高い(=ある種、融通の利かない?)国民気質を表しているようなもの??)
走行区間は、基本的に首都・LONDON(Kings Cross駅)(右写真を参照)を一路北上し、スコットランドの玄関口である、Edinburgh(アルベリー駅)に至る、East Coast Main
Line(東海岸本線)と名づけられている約372miles(約595km)です。(地図2を参照)
もし、この路線を、わが国であらわすとすれば、東海道線の東京〜大阪間に相当する看板的存在のような区間です。
途中のYork(ヨ−ク)駅(写真6参照)の近くには、世界最大級の鉄道博物館もあり、イギリス国内のみならず、世界中の鉄道愛好家たちの注目の的となる施設もあります。(写真7〜9を参照)
(もしも?今後、イギリスを訪れる機会があるようでしたら、ぜひともお立ち寄りになられるといいですね。=往年の名車は勿論、日本の新幹線0系も展示されております。)
同区間は、イギリス国内においては、珍しく、全線約595km、そのすべてが電化されております。
一般的にイギリスの鉄道=非電化で、ディーゼル機関車が、そのすべてとイメージされてしまう方々も多いかな?なんて思いますが・・・現実は違います。
なだらかな平地が続くこの路線の風景。山脈連なる東洋の島国からやって来た私たちは、車窓から覗くこの様子にしばしの安らぎを覚えるかもしれません・・・・・。(写真10参照)そして、またこの路線は、国鉄時代も、現段階におきましても、国内最高速の速さにて、運行され続けております。
実は、IC225という列車名は、単純に最高速度が225km/hという意味です。
基本的にこの列車は、プッシュ・プル方式です。(注1参照)
下り方向を向いているのは、Class91という電気機関車で、編成中唯 一の動力車両となっており、登場したのは1988年です。
現在31両(編成数31ユニット)があり、全車がLondonにあるBond Green検車区に所属しております。
当初の営業目標最高速度は、250km/hでした。
(写真は、旧国鉄時代の塗装です)
しかし、列車そのものがいくら最新鋭の装備とその機構を搭載していても、地上設備(特に信号システム等)そのものが追いついていなかったようで、残念ながら本来持っている性能を十分に発揮できないまま、今日に至っております。
多分、今後も地上設備の大掛かりな刷新を行われないかもしれません?・・・・というのは、民営化した後に一括管理してきた例のRail
Track社が、事実上経営破綻し、さらなる新規での巨額な投資が困難になっているようですから・・・・・。
このコーナーの最後にIC225という列車についてあれこれ写真付で解説させていただきます。
(→ご興味をお持ちになられましたら、参考になられて下さい)
『注1』プッシュ・プル方式とは?
(A)編成の片側にその列車を牽引するための動力車を、反対側には、運転台のみを取り付けた無動力な車両を配置する編成方式。
基本的に欧州各国の駅は、行き止まりになった所が多く、従来の方式であると、進入してきた列車は、その後、出て行くのにも、いちいち反対側の客車に運転台のある機関車を連結しなければならず、とても面倒な作業を行わねばならなかった。
この方式であれば、反対側にも運転台がついた客車があるので、手間が省ける。(この時の動力も勿論、先ほどの機関車を後ろから押して使う=だからプッシュ・プルと表現されている)
▲写真7
▲写真8
▲写真9
▲写真10
☆IC225ガイド・・・・・(※主な掲載写真は、GNER塗装のものです。)
1.Class91電気機関車
▲IC225の国鉄時代
▲IC225の現在
Class91型電気機関車主要緒元
- ●機関車ナンバー
- 91000号〜91031号
- ●製造数
- 31両(試作車両含む)
- ●設計
- GEC ALSTOM社
- ●製造
- BREL CREWE社
- ●製造年
- 1988年〜1991年
- ●軸配置
- BO-BO
- ●総重量
- 約84t
- ●車体全長
- 19.4m
- ●総出力
- 約4,700hp
2.制御荷物客車&専用客車
IC225編成には、1989年以降、すべてにMk4型と区分される専用客車が連結されている。この客車は、イギリスのIC(インター・シテイ)用客車初の自動ドアを装備し、APT—E{注}に採用される予定であった車内設備と車体構造も取り入れられた。
この客車、そのすべてが、Metro−Cammell社にて製造された。
{注} APT(Advance Passenger Train)・・1972年、BR(イギリス国鉄)が、鉄道の高速化実現のため、ガスタービン機関を搭載した試作車両をBR
Derbyにて製造し、その後に各種試験を行った。
結局、この方式は諸問題等から、本格導入されず、現在はYork(ヨーク)の鉄道博物館内に野外放置されたままである。
制御荷物室付客車
●形式 NZ型
●種別 DLV制御荷物客車
●製造数 32両
●製造年 1988年
●番台区分 82200
1等客車
●形式 AD1J
●種別 FO開放型1等客車
●製造数 77両
●製造年 1989〜1992年
●番台区分 11200
2等客車
●形式・種別・製造数
AJ2J (TSOE開放型2等客車) 31両
AL2J (TSOD開放型2等客車) 31両
AC2J (TSO開放型2等客車) 115両
●製造年 1989〜1991年
●番台区分 12200〜12400
1等ビュッフェ客車
●形式 AJ1J
●種別 1等ビュッフェ客車
●製造数 33両
●製造年 1989年
●番台区分 10300
3.IC225の編成
(内訳●電気機関車91型×1●荷物室付制御車×1●1等客車×2両●食堂車×1両●2等客車×7両合計12両編成)
←Edinburgh LONDON→(Kings Cross)
機関車(91型) |
2等車 |
2等車 |
2等車 |
2等車 |
2等車 |
2等車 |
2等車 |
食堂車 |
1等車 |
1等車 |
荷物・制御車 |